NPO法人心音

時代を超えて受け継がれる、みらいへの原動力

  • 成人女性

    島の子ども達ならではの教育の悩みがあることを知りました。IT技術が進んだ今でも難しいことも。島の子ども達を応援したいと思いました。

  • 未来を担う子供たちの教育環境は、大人がつくってあげるべきでしょう。素晴らしい活動をこれからも継続されること、心より応援いたします。

    中年男性
  • 少女

    年齢の異なる子どもたちが互いに切磋琢磨できる、詰め込むだけの学習塾ではなく、学校以外に楽しめる場所。子どもの居場所。私もそういう塾に行ってみたい!

  • 子ども達の「出来る」と言う力を信じ、自己肯定感を伸ばす働きかけは、子ども達の将来性を広げる素晴らしい手段(活動)だと感じました。

    成人女性
子どもの居場所づくりや心のケア
昨年に引き続き、今回で2度目のランチ付き無料学習塾を開講したNPO法人心音。参加した子どもたちは、ときおり笑顔をのぞかせながらも、終始真剣な表情で学習に取り組んでいた。今回は、ボランティアスタッフの4名に、学習塾へ参加したきっかけや指導中に感じたことについて伺うとともに、理事長の安徳健二さんに今後の展望などについて伺った。
ボランティアスタッフの皆さんは、どのようなきっかけで活動に参加していますか

教育現場への興味、沖永良部島への関心・・・きっかけは様々に

(左から、鷲山さん、川井さん、岩﨑さん、大宮さん)

(左から、鷲山さん、川井さん、岩﨑さん、大宮さん)

ボランティアスタッフの大宮さん、岩﨑さん、川井さんは大学生。島と若者をつなぐ、離島での就業体験制度を通じて、沖永良部島へ派遣されたという。
「地元で塾のアルバイトをしているので、学習塾がほとんどない島の子どもたちがどのような環境で勉強をしているのか、興味がありました」(大宮)、「大学で教育関係の勉強をしているので、心音さんの活動に興味がありました」(岩﨑)という2人に対して、「就業体験として、沖永良部島の観光協会に派遣されました。今回はお手伝いとして、最後の2日間に参加しています」(川井)と、それぞれにきっかけは異なるようだ。
また、鷲山さんは、3年前に参加した移住体験ツアーで、理事長・安徳さんと知り合い、心音の活動について知ったことをきっかけに、今回はボランティアスタッフとして訪れたという。「将来的には沖永良部島へ移住して、積極的にこの活動へ関わっていきたいと考えています」(鷲山)

学習塾の内容や、やり方で工夫している点はありますか?

「やればできる」という成功体験を感じられる指導を

夏休みの無料学習塾に参加しているのは小学生と中学生。生徒の一人ひとりに対して、それぞれの年齢や学力に合わせた接し方や指導が求められる。 
大宮さんは7名の中学生を担当。まずは、塾に通ったこともなく、島の外のことを知らない生徒に、自分の習熟度のレベルを把握させることを目指したという。「少し厳しく指導したので、中学生から『怖い……』と言われてしまって」と苦笑いするほど、指導にも力が入っているようだ。
「自分から宿題をしない子をいかに宿題に向かわせるか、『できない』ではなく『できるんだ』と実感してもらうことに苦心しました」という岩﨑さんや、「小学校の夏休みの宿題を終わらせることを目標に指導しましたが、教えることの難しさを実感しました」という川井さんなど、この学習塾はボランティアの大学生にとっても貴重な体験となっている。
鷲山さんは年長者として、より高い視点から指導にあたった。「教科書や教材など、これまで学んだこととの整合性をもたせるように気をつけました。人が成長するためには、自分で考えて辿り着く成功体験を積み重ねていくことが大切だと考えていますので、子どもたちが成功体験を感じられるような指導を心掛けました」と語る。こうした指導は、子どもたちにとって良い刺激になっただろう。

子どもたちの変化を感じたエピソードを教えてください。

子ども達の学習へ取り組む姿勢が変わった

夏休みの1週間という短い期間とはいえ、いつもとは異なる学習空間。仲間とともに学習するなかで、子どもたちはどのように変わっていったのだろうか。
 
大宮さんは「中学生の子どものなかには、高校受験の難しさを再認識し、勉強する量や方法が変わったという生徒もいました。学習へ取り組む姿勢を変えるきっかけになったようです」と喜びを語る。
岩﨑さんも「子どもたちが『できる』という実感を積み重ねることで、苦手な科目でも自分からすすんで取り組むようになりました。やる気を出してくれたようで、頼もしいですね」と、それぞれに手ごたえを感じたようだ。

財団からの助成後2回目の学習塾開催となりましたが、活動に変化はありましたか?

イベントや課外授業も取り入れ、充実した内容に

「NPO法人 心音」の理事長を務める安徳健二さん

「NPO法人 心音」の理事長を務める安徳健二さん

九電みらい財団からの助成後、2回目の学習塾を開催した心音。前回からどのように活動が変化したのか、改めて理事長の安徳さんにお話を伺った。

「今年は32名の小中学生が集まりました。保護者の皆様からも、ぜひまた学習塾を開催してほしいという声を非常に多くいただいており、昨年この塾に参加した子供の多くがリピーターになってくれています。なかには、前回の学習塾のあと『子どもが自分からすすんで宿題をするようになった』、『学習する癖がついた』とおっしゃる保護者の方もいて、大きな効果があったのだと実感しています。
今回は、学習だけでなくイベントや課外授業も取り入れました。イベントは、大友剛さんの『マジックと絵本と音楽のコンサート』を行い、子どもたちに大好評でした。また、課外授業では『西郷南洲記念館』を見学しました。『敬天愛人』という西郷隆盛の人生訓は、流刑地だったここ沖永良部島で生まれたとされています。島の子どもたちにはぜひ知っておいてもらいたい歴史です。」

今後、この学習塾を子どもたちにとってどのような存在にしたいですか?

「子どもの居場所」を地域に根付かせ、継続していきたい

「今後も、夏休みの1週間だけでもこの塾を続けていきたいと考えています。今回参加してくれたスタッフは『学年や学校が違っても交流でき、年齢の異なる子どもたちが互いに切磋琢磨できる』と実感したそうです。また、保護者の方からは、『詰め込むだけの学習塾ではなく、学校以外に楽しめる場所』『まさに子どもの居場所。できれば開催日を増やしてほしい』といった声もいただいています。私たちの学習塾は、明治維新の原動力になったと言われている、薩摩藩が武士階級の子弟に行った『郷中教育』に通じるものであり、郷土料理中心の昼食を提供することも喜ばれていますね。
無料での活動を継続するためには、やはり運営資金の確保が課題です。そこで考えているのは、行政のバックアップを得ることです。
行政からのバックアップがあれば、沖永良部島の他地区でも、このような事業を実施できる団体はあると考えています。将来的には校区ごとに学習塾を実施できれば理想的ですが、まずは私たちが先陣を切り、“子どもの居場所”を確保する大切さを地域に根付かせ、最終的には行政が支援に動くまで、積極的に活動を続けていきたいと考えています。」



 

時代を超えて受け継がれる、みらいへの原動力

子ども達の学習へ取り組む姿勢が変化するなど、確かな手ごたえを感じている心音の無料学習塾。その取組みは、沖永良部だけでなく、静岡県のラジオ局から取材を受けるなど、九州エリアを越えて注目され始めている。
話を伺っていると、かつての薩摩藩の郷中教育が、現代のニーズを取り入れ「現代版郷中教育」として体現されているように感じられた。明治維新の礎となった郷中教育が、いつか、子どもたちのみらいの原動力となるに違いない。
団体プロフィール

NPO法人心音

2006年4月に設立。沖永良部島全域を対象に地域活性化や福祉の増進を目的に、無料の学習塾のほか、定住・移住促進や就労支援、障害児通所支援、障害者福祉サービスなど、幅広い活動を展開している。
また2016年には発達障がいや不登校の子どもたちを支援する指定多機能型事業所「サランセンター」を開設。このほか毎月1回、高齢者がカフェに集う「オレンジカフェ事業」なども実施している。

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