NPO法人 心ゆるり

子どもの幸せなみらいは、お母さんの笑顔から

子育て支援
佐賀県東部に位置するみやき町が2015年に開設した「みやき町産前産後サポートステーション」。運営しているのは、産前産後の母親に寄り添い安心して子育てができるように支援している「NPO法人 心ゆるり」だ。当財団が助成をしている「宿泊滞在型心身サポート事業」や、活動への思いについて、理事長の永瀬千枝さんと助産師の高岡瑞枝さんにお話を伺った。
「宿泊滞在型心身サポート事業」とは、具体的にどのような活動でしょうか?

しっかり休める環境の中で、お母さんが「ホッとできる日」を

永瀬さん:最近のお母さんはお産のために里帰りするケースが減っているようです。その理由は、実家が遠い場合や、実家の母親が仕事や介護などで忙しい場合だけでなく、母親と一緒にいるとかえってストレスになる、というケースも少なくありません。
里帰り出産をしたお母さんでも、自宅に戻ってからが大変。毎日赤ちゃんと向き合う中で、身体だけでなく脳も疲れてくると、余裕を持てなくなってしまいます。
そこで私たちが2016年から始めたのが、お母さんと赤ちゃんが一緒に宿泊してサポートを受けられる「産後ステイ」です。滞在中、お母さんは赤ちゃんをスタッフに任せて、1人でのんびり過ごしたり、助産師や看護師に育児の悩みを相談したり、ストレスを減らすホメオストレッチ(筋肉応用覚醒伸展法)を受けたりできます。ゆっくりご飯を食べたりお風呂に入ることや、夜ぐっすり眠ることは、産後のお母さんにとってとても大切なことです。

「NPO法人心ゆるり」の理事長を務める永瀬千枝さん

「NPO法人心ゆるり」の理事長を務める永瀬千枝さん

助産師の高岡瑞枝さん

助産師の高岡瑞枝さん

「みやき町産前産後サポートステーション」を開設したきっかけは?

「お母さんたちを元気にしてあげたい!」という思いを持つ2人の出会い

永瀬さん:きっかけは、福岡県小郡市で産前産後のお母さんと子どものサポート活動を行っていた、助産師の豊田晴子さんとの出会いでした。私がコメンテーターを務めていたFMラジオの番組にゲストとしてお越しいただいた際に、「日本の将来のために、お母さんたちを元気にしなくては」という話になりました。子どもが健やかに育つには、お母さんが心に余裕を持ち笑顔でいることが大事です。しかし、核家族化が進み、地域とのつながりも希薄になっているなかで、お母さんは1人で悩みを抱え込み余裕がなくなりがちなのが現状です。
その後、豊田さんと、ストレスケアカウンセラーである私が組むことで何かできるのでは、という考えが「子育て支援のまち宣言」を出していたみやき町に受け入れられて、この「産前産後サポートステーション」の開設へとつながりました。

産後のお母さんたちが抱えている課題や、その解決に向けたアプローチを教えてください。

お母さんのストレスをゆっくり解きほぐしていく

高岡さん:私は助産師として、お母さんたちの相談に乗ったり、乳房ケアを行ったりしています。ストレスを多く抱えて悩んでいるお母さんの中には、まるで能面のように無表情になってしまっている人さえいらっしゃいます。そんなストレスを抱えたお母さんには、ご本人から出てくる言葉を待って、そこからゆっくりと解きほぐしていくように心がけています。
また、昨今は母乳で育てることが主流になっているせいか、ミルクで育てているお母さんが肩身の狭い思いをしたり、この施設を利用できないと勘違いされることもあるようです。赤ちゃんを育てるのはミルクでも大丈夫!なんでも相談できる心のよりどころとして、育児で困ったり、悩んでいることがあればぜひ頼ってもらいたいです。

永瀬さん:ストレスを抱えがちなお母さんは、実は小さい頃からその母親からのストレスを受けて育ってきたケースがよくあります。そういったストレスの連鎖を解消して、お母さんたちをとにかく楽な気持ちにしてあげたいです。お母さんに余裕があれば、子どもが泣いてグズっても「よしよし」って抱きしめてあげられますから、お母さんを笑顔にすることは子どもの幸せにもつながります。

活動の中でうれしかったことや、やりがいを感じたエピソードを教えてください。

お母さんたちの表情から見てとれる、心のやすらぎ

高岡さん:最初は硬い表情をしていたお母さんが、帰る頃には表情がふわっと緩んで、リラックスしているのを見ると、やはり嬉しく思います。何度か通っていただいているうちに「もう1人産もうかな」と言うお母さんもいらっしゃるくらいです。病院で働いていたときには、出産後に退院していくお母さんを見送るまでしかできませんでしたが、今は産後のお母さんの生活に寄り添い、産後疲れのお母さんを笑顔にできることに、大きなやりがいを感じています。
最近では、地元の母子保健推進員の方々がお母さんたちを自宅訪問する際に、「産前産後サポートステーション」の利用を勧めてくださることもあるようです。産前産後のお母さんたちへの地域ぐるみのサポートが、少しずつ広がっているように感じています。

今後の活動について、展望や目標を教えてください。

「産後のストレスケアは当たり前」という社会に

永瀬さん:女性は、ほんの少しでもしっかりと心身を休めることができれば、また母親として頑張る力が湧いてくるものです。だから、お母さんがゆったりと養生して活力を得られるような安らげる場であり続けたいと考えています。そのためには人材を十分確保する必要があり、人件費を賄うことが課題です。解決策の一つとして、今後、より多くの寄付を集められるように、寄付する側に税制優遇が適用される認定NPOになることを目指しています。
産後のお母さんのなかには、休息をとることに対して後ろめたさを感じてしまう方もいらっしゃいます。「産後うつ」を防ぐためにも、これからは「産後のストレスケアは当たり前」という社会にしていきたいです。



 

子どもの幸せなみらいは、お母さんの笑顔から

産前産後のお母さんの気持ちに共感して、包み込んであげられる場所にしたい――。「心ゆるり」の皆さんは、そんな強く温かい思いを持って活動していた。「産後のストレスケアを当たり前に」という思いは、彼女たちの心温まる活動によってより一層広がっていくだろう。お母さんの優しい笑顔が増えることで、赤ちゃんだけでなく、家族みんなの笑顔も増えていくに違いない。

団体プロフィール

NPO法人 心ゆるり

2015年4月に設立し、同年10月にオープンした、「みやき町 産前産後サポートステーション」を運営。助産師、看護師、ストレスケアカウンセラーなど専門知識を持った女性スタッフが常駐。自宅や実家でくつろいでいるような雰囲気の中で母親と赤ちゃんに寄り添い、産前産後の母親が安心して過ごせる環境を提供している。2018年からは「NPO法人 きゃんどるハート」に名称を変更。

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