NPO法人 かごしま自然学校

地域のみらいへ受け継ぐ“生きる力”

  • 成人女性

    昔のように自然が身近に感じられない現代の子供達に生きる力を育んで欲しいです

  • 自然体験で、のびのびと心を広げて育ってほしいです。

    中年男性
  • 少女

    生きる知恵を遊びを通して知れたらいいなぁ!!楽しそうです!

  • 生きる力を学ぶことはとても重要なことだと思いました。

    成人女性
さまざまな体験を通じた次世代育成
2016年3月で閉校となった鹿児島県日置市の扇尾小学校。「NPO法人かごしま自然学校」は、その校舎を利用してさまざまな体験やワークショップやライブなどを楽しめるイベント「あそびのデパート」などを手掛ける。イベントにお邪魔し、代表を務める吉岡敦之さんから、活動を始めたきっかけや、子どもたちへ伝えたいことなどを伺った。
活動を始めたきっかけや目的を教えてください。

大学時代の活動や東日本大震災の経験がきっかけ

「かごしま自然学校」の代表を務める吉岡敦之さん

「かごしま自然学校」の代表を務める吉岡敦之さん

私は大学で「里山生態研究会」というサークルを立ち上げ、森林ボランティアとして子どもたちと関わっていました。子どもと触れ合うなかで、彼らの成長過程に必要なのは知識や学校の勉強だけではないのでは?と感じたことから、大学院では子どもの成長と自然体験の関係を研究しました。
また、東日本大震災が起きた際に、それまで親しみしか感じていなかった“自然”の恐ろしさを見せつけられたのと同時に、私自身が自然のなかで生き抜く知恵や技術、経験がないことを痛感したことも活動のベースとなっています。
大学卒業後は日置市へ引っ越し。そのとき日置市から、扇尾小学校が廃校になるので、廃校を利用する方法を考えて欲しいと相談を受けました。このとき考えた企画が、現在定期的に開催している「あそびのデパート」というイベントにつながっています。

「かごしま自然学校」の主な活動内容を教えてください。

廃校を活用し、子どもたちの“生きる力”を養う

私たちは主に「あそびのデパート」と「21世紀型能力向上塾」の2つの活動をしています。
「あそびのデパート」では、子どもたちの“生きる力”を養うために、自然体験、調理体験、小物作り体験などの活動をしており、廃校を会場として週末にイベントを開催しています。このイベントは、地域の子どもから高齢者までが徒歩で集まることができる廃校を活用することで、 世代間交流にもつながっています。
また、「21世紀型能力向上塾」では、「あそびのデパート」を通して子どもたちの「生きる力」を育むためには、どうすればより効果的かを話し合い、地域や親子のニーズとバランスを取りながら計画・実行するための会議です。

どのような思いで活動していますか。

まずは挑戦してみて、いろいろな経験を積んでほしい

子どもたちにはとにかくいろいろな経験や体験を積んでもらいたいです。「里山生態研究会」のキャッチフレーズは「何もないように見えるところから何かを導きだす」でした。やらなければ0点でも、やってみれば1点、2点が取れるかもしれない。とにかく挑戦してみることが、考える力をつけることにもつながります。
現代は日本社会全体で個人主義の傾向が強まっており、他者との関わりが希薄になっていますよね。でも、子どもの成長にとっては他者との関わりが重要だと思うのです。私自身も、たくさんの地域の方々に支えられてこそ活動ができ、成長できていると実感しています。また現在は、いつ、どこで災害が起きてもおかしくない時代ですから、危機管理の観点からも他者と協力する互助の精神は大切です。そういったことも含め、子どもたちにはまず経験を積んでもらいたい。私たちの活動が、その手段のひとつになってくれれば嬉しいです。

活動における課題はありますか?

たくさんの子どもたちに愛される独自のコンテンツを模索中

今年の夏休みにいくつかイベントを開催したなかで、「開催日程によっては、ボランティアも参加者も集まらない」ということを痛感しました。夏休みは各地でイベントが多く、よほどの魅力がなければ集客が難しいのです。たくさんの人に集まってもらうためには、扇尾地区でしかできないような、「かごしま自然学校」でなければ思いつかないような、目玉のコンテンツを作らなければならないと思っています。
また、参加者の年齢に合わせた資料づくりやカリキュラムも開発していきたいです。例えば自然体験の中に科学の要素も加えれば、学年が上がるごとに少しずつ新しい知識を学ぶことができます。そうすれば、「続きはまた来年習いたい!」と、継続的に参加してもらえるようになるのではと考えています。

今後の展望や目標を教えてください

地域の高齢者がもつ“生きる力”を子どもたちに伝えたい

活動のなかで扇尾地区の年配者が持っている技術や知識を、次世代に伝えていかねばと考えています。今のままでは、近い将来、“生きる力”が失われてしまうという危機感があるからです。私たちのイベントには、できるだけ地域の年配の方々にもお越しいただき、まだ元気なうちに、“生きる力”を子どもたちに伝えてほしいと考えています。
実は、扇尾小学校は扇尾地区の廃校活用の第一事例ですが、スタート時は地域から「こうして欲しい」という要望が全くありませんでした。しかしイベントを継続することで、地域の方からも少しずつアイデアが出てくるようになってきています。地域の方々がイベント趣旨に賛同し、応援してくださる以上、ますます頑張らねばと思っているところです。
今後は他団体との共催という形で、他の自治体の廃校を利用した「あそびのデパート」を開催していきます。残念ながら今後も廃校は増えていくので、これをモデルケースとして活動のネットワークを広げていきたいです。



 

地域のみらいへ受け継ぐ“生きる力”

「かごしま自然学校」は、地域の方々や他団体と連携しながら「あそびのデパート」のイベントを充実させ、子どもたちがさまざまな経験を積む機会を与えていた。「子どもたちに昔の知恵を教えることは大変だが楽しく、生きがいになっている」と、イベントで先生を務める地域の方がおっしゃっており、大人にとっても良い影響があるようだ。「かごしま自然学校」は、これからもきっと、子どもたちへ“生きる力”を受け継ぐ楽しいイベントを企画し、廃校に子どもたちの笑い声を再び響かせるだろう。
団体プロフィール

NPO法人 かごしま自然学校

代表の吉岡敦之氏らが学生時代に培ったノウハウ・ネットワークを生かし、2015年3月から鹿児島県日置市で任意団体として活動を開始。同年7月に「かごしま自然学校」を設立し、子どもだけでなく幅広い年代を対象とした自然体験、調理体験、小物作り体験などのイベントを実施している。現在、2カ月に1回ほどのペースで、日置市の廃校・扇尾小学校において「あそびのデパート」を開催中。

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